世の中にはいろいろな物語があります。

ですが、その中でもっとも重要なのは登場人物の考えや感情です。

登場人物の考えや感情に思いを寄せるからこそ、物語が楽しめるわけです。

その中で、「考えの変化」に注目してみます。

最近見た作品だけでも「考えが変わる」印象的なシーンがあります。

 

ソウルフルワールド:ずっと主人公の音楽家になるという夢に反対していた母親が、考えを変えて主人公を応援するようになる。(ここの場面は本当に涙がこぼれそうになりました)

 

葬送のフリーレン:弟子を取ることを否定していた主人公が、かつての仲間の策略の結果、弟子を取ることに同意する場面

 

さらに、劇的な変化ではないけれども、徐々に考えが変わっていく物語も多いです。

 

恋愛物語の王道:嫌いだった相手を徐々に好きになっていく

 

バディ物の王道:信用できないと思っていた相手を徐々に信用するようになる

 

こんな風に、劇的な瞬間がある場合もあれば、無い場合もありますが、とにかく「考えの変化」は重要です。

これを考えていないと、非常につまらない物語になります。

 

恋愛物語:主人公とAは相思相愛。物語が進んでもその関係は全く変わらずに、関係が揺らいだりすることが無く最後まで同じ

これ、おもしろいと思いますか?

全く面白くありません。

 

バディ物:主人公と新しい相棒Aは反目し合っている。物語が進んでいてもずっと反目し合っていて、最後になっても信頼もなにもせずにずっと反目している。

これ、面白いと思いますか?

こんな作品を見ていたら絶対にストレスが爆発します。

 

冒険物:主人公が超ポジティブで、一度も凹むことがなくずっとポジティブ!

これ、面白いと思いますか?

実はこれでも面白いパターンがあります。主人公がポジティブなままでも周囲が悩んだりしていて、主人公がポジティブさで周囲の人々を助けるパターンです。(いわゆる英雄パターン)

この場合は実は主人公は悩んでいる周囲の人々であり、主人公はただの舞台装置です。

もし、誰の考えも変化しない冒険物があったらどうでしょう。

主人公:ずっとポジティブ

仲間A:ずっと陰鬱

仲間B:ずっと仲間Aが嫌い

街の人:主人公を信用しておらず、最後までずっと信用しない

こんなもの、面白いわけがありません。

評論家は「キャラクター同士の化学反応が楽しい」といった言葉を使います。

これは、キャラクター同士が反応することでお互いの関係や考えが変化することを表しています。

逆に言うと、関係や考えが変化しないと言うことは「化学反応が起きていない」ことであり、つまり面白くないと言うことです。

 

原則論をすると、物語というのは「何かの変化」を描く物です。

もしなにも変化しないのであれば、それは状況の説明だけであって物語になりません。

変化にはいろいろな物があります。例えば、敵を討伐する、主人公が目的を達成する、世界を救う、好きな人と結ばれる。

「考えの変化」はそれらの中の一つです。

そして、すごく使いやすく、いろんなアイディアと組み合わせたり、別のプロットにおまけ的に追加することもできます。

ものすごく強いツールなので、是非ともあなたの物語道具箱の中に置いておきましょう!!

 

最後に注意として言っておきますと、「考えの変化」がない作品が絶対にダメというわけではありません。

例えばミステリーは謎解きが主題であって、探偵役や警察の心理なんておまけでしかありません。

そういう作品ではキャラクターの考えが変化するシーンが無くてもエンタメとして成立します。

「この作品は登場人物の考えの変化が無い! だからダメだ!」と言い切ることは出来ません。

でも、やっぱり「考えの変化」は大きな要素なので、あなたの作品なら入れられるだけ入れましょう。

例えば、協力者のキャラクターをただ出すのでは無く、最初は非協力的だったが途中で考えを変えて協力するなんてシーンを入れるとそれだけで面白くなります。

なんとなく主人公と取っ付いてしまうヒロインを出すのでは無く、最初は主人公に反感を持っていたのにあるときに好きになる、みたいなエピソードを入れると面白くあります。

そんな風に「登場人物の考えの変化」を自分の物語に入れられないか考えてみましょう!!

 

◆補足

考えの変化にはそれ相応の理由がいりますが、実はその理由が曖昧な作品も結構あります。

そんな場合でも読者が勝手に考えてくれたりするので、変化が無いよりはあった方が絶対にいいです。