「転生したらスライムだった件」から考えるおもしろい物語の要素

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転生したらスライムだった件(以下、転スラ)のアニメを見て、すっごく楽しんだので、なんで楽しかったのか分析して見たいと思う。

個人的感想&ネタバレなので、ご注意ください!

実は楽しさにムラがある

楽しかったと書きましたが、実は結構ムラがあるんです。

面白いところは面白かったけど、面白くないと感じたところは面白くなかった。

第一期1-2話:あまり面白くない

最初に異世界に転生したところは「テンプレ通り」ということで特に面白くありませんでした。

そして、ダンジョンの中のモンスターを倒してスキルを取得していくのも、ゲームで淡々とレベル上げをしているようでそれほど面白く感じませんでした。

第一期3-8話:そこそこ

二話後半からゴブリンの村の話が始まり村を発展させていく話が始まります。

・襲ってきた狼タイプの敵を倒して、仲間にする

・他国に行って技術者を引っ張ってくる

「敵対していた二つの種族が簡単にまとまりすぎだろ!」という突っ込みどころはあるのですが、今まで主人公が一人でレベル上げをしていたような形だったので、ゴブリンという他者が入ってくることで面白くなります。

特にゴブリン達の驚きとかリアクションが非常によいスパイスになっていると思います。

もし、ゴブリン達のリアクションが無ければかなり退屈になっていたと思います。

そして、シズが登場して、それを取り込むことで主人公が人型になれるようになります。

スライムが売りの作品で人型になってしまうと批判されると思うので、そこに「思いを継ぐ」ような設定を入れたことは非常に賢いやり方だと思いました。

 

第一期9-14話:面白い

ここから主人公が人型になれるようになります。

個人的に主人公の人型が可愛すぎて、そこが好みにはまってしまいました。

だから、その底上げ要素で評価が爆上がりしているかも(汗;

・オーガが仲間になる

・オークロードを倒す

バトルが盛り上がるところなので、普通に楽しめました。

それにしても一瞬で街が発展しすぎていて「ええ……」ってなる。

なろう系の発展速度は異常。普通に考えて十年以上はかかるはずの展開を数ヶ月で進めるから、そこは納得できない。

 

第一期15-19話:面白い

この辺りもバトル続きで面白かったです。

・武装国家と同盟を組む

・魔王ミリムが来るが仲良くなる

・カリュビディス(めっちゃ強い敵)と戦う

 

第一期20-23話:そこそこ

異世界から転生してきた子供を育てる話になり、話がトーンダウンします。

ものすごくつまらないという事は無いのですが、明らかにテンションはダウンします。

ただ、ずっとバトル続きだときついので、少し緩む場面を入れるのは悪くないですが、ちょっと落ち着きすぎ感もあります。

 

24話は外伝なので、省略。

 

第二期1-話:けっこう面白い

起こることが多いので書き切れないので省略。

基本的には謀略・バトルが主です。

主人公が魔王になるところは演出の気合いと、美少女っぷりが半端なくてよかったです。

 

面白く感じた要素

ここから先は面白く感じた要素を列挙していきます。

個人的な趣向が大きいので、人によっては当てはまらないかも知れません。

 

主人公が強いけど、最強では無い

よく出来たバトルマンガの強さに設定されているように感じます。

まず、主人公は強い。

大抵の敵は圧倒できるので、俺TUEEE感を味わえて、主人公に感情移入している読者が楽しく感じられる。

しかし、最強では無く主人公以上の敵も存在しているので、緊張感がゼロにはなりません。

もし、主人公がもっと弱いと読者が楽しく感じませんし、安易に最強にしてしまうと先の展開も気になりません。

すごくほどよい強さ設定になっていると感じます。

 

ただ、このちょうどいい強さ設定になったのは中盤からだと感じています。

序盤は主人公の万能性が前に出すぎていて、緊張感は皆無でした。

バトルはおもしろい

やっぱりバトル要素があると面白いです。

どうして、こんなに面白いんでしょうか。

実は暗い展開が嫌いなので戦闘がある作品は苦手な物が多いのですが、この作品はあまり暗くならずに戦いが展開するのでとても見やすかったです。

湿っぽさを出さないように戦闘を描いているのは非常によかったです。

凄いことが起きている感

魔王になるところなど、音楽と大賢者のアナウンス&エフェクトが秀逸で盛り上がりました。

やはり小説と違って映像作品は「凝った映像」&「音楽」で演出できるのが強い。

また、それに対する周辺キャラの反応も「凄いことが起きている感」を演出していました。

こういう盛り上がりがうまいと面白い。

主人公が人間くさくない

声優さんの演技プランもあると思うけれど、主人公があまり人間くさくない、というか割と淡々としている。

強すぎる主人公なので、そこに下手な性格をつけると反感を持たれる可能性が高いです。

幅広い人に受け入れられるように淡々としていて軽い性格にしたのは正解だと思います。

個人的には、もうちょっとえぐみがあっても面白かった気もしますが。

悪い展開を予想→いい展開

テンプレではありますが、好きです。

・ミューランを殺すと言いつつ、実は助ける

・仲間が死んだと思いきや、生き返る

主人公を侮る敵

敵が主人公の実力を低く見積もって侮るのはやっぱり面白い。

敵が驚く

敵が驚く場面はやはり必要ですからね。

・切り札のスキル持ちがあっさり殺される

・涙を流してびびりまくる

大賢者の演出がいい

個人的に、ああいう機械的なアナウンスが凄く好きなので、非常に良かったです。

大賢者の画面内のエフェクトも凝っている物が多くて格好良かったです。

文章で同じセリフを書いてもあんなに格好良くは見えないので、音声があるアニメの強みですね。

主人公上げの演出を忘れない

主人公ヨイショはなろうの悪弊として知られていますが、うまくやればやはり面白いです。

配下があまりに主人公を全肯定しすぎるのは気になりますが、やはり無いよりはあった方が安心して見ることが出来ます。

 

引っかかった要素

発展早すぎ

これはスピーディな展開のために仕方ないがところではありますが、町の発展や技術の発展が早すぎます。

技術の伝達やそれに熟練するまでにはそれなりの時間がかかるはずなので、いくらなんでもそこまで早くないだろ!と突っ込みたくなってしまいました。

しかし、ここをリアルに描くと十年くらいの時間が平気でかかってしまうので、難しいところ。

十代の人間はあっという間に大人になってしまうので、展開がゆっくりだと十代キャラクターの活躍が描きにくいです。

キャラクター達の物わかり良すぎ

戦争した後の遺恨がなさ過ぎて、そこのリアリティは低いです。

ここが戦争を描く作品の難しいところです。

リアリティたっぷりに描けば、戦争後もいろいろな確執があるはずなのですが、暗いトーンの話になってしまいます。

しかし、そういった確執を一切書かないとリアリティが低すぎて気になります。

この作品では全て主人公の配下にすることで「確執が発生しない」ようにしています。

それでもやはり不自然さはあるので、本当に人死にがからむ話とエンタメの両立は難しいです。

キャラクター増えすぎ問題

特徴的なキャラクターが多くて、それぞれのキャラはすごくいいと思うのですが、やはり増えすぎに感じました。

特に会議シーンなどはあまりに人が多く感じます。

人数が増えるほど、描くのが難しくなっていきます。

会議長過ぎ問題

特に二期の会議部分で顕著なのですが、ここに「長編化問題」と「キャラ増えすぎ問題」の両方の問題が出ているように感じました。

まず、長編化に伴って状況が複雑になり、一つの行動を取るだけでも解説&作戦でとても時間がかかるようになる。

そこに大量に増えたキャラの出番を用意すると、話が停滞する。

会話が何話も連続して、さすがに展開が遅く感じてしまいました。

 

→長編でもあまり状況を複雑にしない工夫が必要

→長編でもキャラクターを増やさないか、増やした分を減らすなどして、アクティブなキャラクター数を増やしすぎない工夫が必要

 

キャラクターが山のように居る方が好きな人もいると思うのですが、私は物語の進行速度をコントロールできなくなるのが嫌いなので、上記のように思います。

スライムである理由があんまりない

この作品が世に出たときは「主人公がスライム」ということが売りになったので、マーケティング的な意味では意味があります。

しかし、作品の中ではそれほど意味がありません。

元々人型でスライム的な能力を持っていてもこの作品は成立したと思います。

スライム型もかわいいけど、あきらかに人型が美少女過ぎるから、そっちのほうが見ていて楽しいし。

 

ストレスが無い

この作品で目立たないけど凄い部分は「ストレスが無い」部分では無いでしょうか。

大抵の作品には見ているのがつらくなって視聴を辞めてしまうポイントがありますが、この作品はそういうものが少なく感じました。

これは結構凄い。

全部、敵が悪い

基本的に主人公が騒ぎを起こすことは無く、だいたい敵が騒ぎを起こしてくれます。

主人公はそれに対処しているだけなので、主人公が「自分が悪いのでは」と悩む必要が無くてストレスフリーです。

味方が主人公を否定しない

作品によっては、仲間であっても時には主人公に苦言を言って主人公が悩みながらもそれを受け入れたりします。

しかし、この作品では主人公に苦言を言う仲間はいません。

他の国の王が「人前で話すときに下手に出過ぎだ」的な事をいうことはありますが所詮その程度です。

そのせいで仲間と居るときにストレスを感じることがありません。

同格の友人がいない

実は主人公と同等の格の人間はほぼでてきません。

同等の人間ならお互いに苦言を言ったりすることがありますが、同格の人間がいないのでそういう苦言をいう人が居ません。

・仲間は全員配下

・仲良くしている他国の王とは距離がある

・主人公より強い魔王ミリムはお馬鹿キャラ

・主人公より強い?ドラゴン(ヴェルドラ)もお馬鹿キャラ

それぞれうまくずらしてあって、対等な友人キャラが存在しないようにしてあります。

 

総評

やはりヒットした作品だけあって、良く出来ていました。

しかし、そんな作品でも「ここはいい」だけでなく「ここはいまいち」というポイントを見つけられて、かなりいい勉強になりました。

基本的には「魅力的なキャラクター」+「バトル」+「合間のコメディパート」という王道的な構成で出来ている作品でした。

やはり王道はちゃんとやるとおもしろい……。

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