『驚き』を生む物語の部品

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驚きの仕組み

驚きの基本的な構造は「Aと思ったらBだった」です。

まず読者にA(ヒロインは女性)と思わせておいて、実はB(ヒロインは男だった!)という事実を示すと、読者は驚きます。

ここで重要なのは、読者を驚かせるにはAとBの両方が必要だと言うことです。

作者はつい「こんなぶっ飛んだ設定を出せば驚くだろう!」と思って、Bだけをだしてしまいますが、そうすると意外と読者が驚いてくれず「なんで?」とがっかりしてしまうことになります。

まず主人公がヒロインに出会い「なんて綺麗な女性だ」と「(A)完全に女だ」と思い込んだところで「(B)実は男です」と言われるから驚くのであって、出会いの時に「えーと、これから人を紹介するよ。どう見ても女性に見えるけど実は男だから」と最初にBを言われてしまったら出会っても驚きません。

作者はうっかりトリッキーなBを用意すれば読者が驚くと考えてしまいますが、Aが必要です。

なぜ作者はBだけを書いてしまうのか

現実で考えてみましょう。

「なにもいないと思っていた茂みから、突然狼が飛び出してきた」という状況を考えてください。

これを経験したときに、その人はどういう風に記憶するでしょうか。

驚きという感情は「突然狼が飛び出してきた」という所と結びつきますが、「なにもいないと思っていた」という部分はあまり記憶されません。

だから、その人が後で語るときは「突然狼が飛び出してきて驚いた」というところだけが強調されます。

物語でも同じです。

読者がすっかりヒロインが普通の女性だと思い込んだところで「実は男だ!」という展開があった場合、読者は「実は男だ!」という所だけが驚きとして記憶に残っていて、そのまえにヒロインが普通の女性だと思い込まされていた部分は印象が薄いです。

だから、その読者が作者に回ったときに「実は男だ!」があれば読者は驚くと勘違いしてしまうのです。

 

なぜ驚きが大切か

驚きなんて必要?と思うかも知れませんが、必要です。

なぜなら、驚きは人の注意を引きつけるからです。

人は元々状況を把握しようとする生き物です。状況が把握できていないと知らないうちに危険な状況に巻き込まれる可能性があるからです。

驚きというのは状況を把握できていないときに引き起こされる感情ですので、その感情は本能に「想定外のことが起きた! 注意力が不足していた! もっと注意深く現状を把握せよ!」と働きかけます。

つまり、物語の中で驚きがあると、読者はその作品に集中してくれるようになるわけです。

逆に一切驚きが無く、読者が思っているとおりに進んでいくと、読者は「あー……退屈」と思ってしまいます。

退屈でも心地よければ読んでくれるかも知れませんが、しかし本気でのめり込んでくれることはありません。

 

世界設定の驚き

世界設定はうまく使えば大きな驚きを与えられます。

しかし、世界設定は物語の中で一貫しているので、一回この驚きをつかってしまったら二度と使えません。

一度しか使えない大技だといえます。

実はゲーム世界だった

現実で起こった出来事だと思ったら、VRゲームの世界で起こった出来事だった。

実は異世界だった

現代だと思ったら異世界だった。

ただ、異世界物が一般化しているので、今ではこの展開は驚かれません。

異世界だと思ったら未来の地球だった

うまく使うと面白い展開になりますが、最近は使い古されているので微妙かも。

実は現実だった

ゲーム世界だと思ったら、現実だった。

これも今では一般化しているので、現在ではあまり驚かれないでしょう。

実はシミュレーションされた世界だった

現実の世界だと思ったら、コンピュータでシミュレーションされた世界だった。

シミュレーションしているのは人間の場合もあれば、もっと進んだ世界の宇宙人の場合もあります。

魔法だと思ったら科学だった

魔法にしか見えない現象を引き起こしているのは、実は非常に進んだ科学技術だった。

 

TIPS

世界設定の驚きを使う場合、出来れば主人公と敵の両方が居る場面で種明かしをしましょう。

主人公だけが「な、なんだってー!」と言っているより、敵と味方の両方が「な、なんだってー

!」と言っている方が盛り上がる場面になります。

 

 

キャラクター属性の驚き

女だと思ったら男だった

性別が違うのは結構な驚きになります。

ただ、男の娘が一般化しているので少しでもヒントを与えると読者は簡単に察してしまいます。

男だと思ったら女だった

上記と同じパターンです。

こちらもうまく決めれば大きな驚きになります。

真面目な性格だと思ったらいかれた性格だった

真面目そうな外見・服装・振る舞いで登場させておいて、ある時点でいきなり本性を現すという方法です。

例えば、すごく生真面目で厳格な女性なのに、好みの少年が現れた途端に息を荒くして欲望に忠実になったら驚きますね。(ありがちと言えばありがちですが、なにもないよりは驚きます)

身分を偽っていた

大昔からあるパターンだと「平民だと思ったらお姫様だった」という奴ですが、現代の読者はこれに慣れているのでもはや驚いてくれません。

これで驚かすには、「奴隷として振る舞っていたが実はお姫様だった」ぐらいの身分のギャップが必要です。

探して居た相手が身近に居た

主人公達がずっと探している相手がいるとして、その相手が実は身近な相手だと分かると驚きが生まれます。

探されている側がそれを自覚して主人公達に隠している場合と、探されている側が主人公達が探していることをしらずに普通に振る舞っていただけの場合があります。

「コードネーム○○は(キャラクター名)のことだったんだ!」「な、なんだってー!?」と盛り上げましょう。

 

驚く新規キャラクター

作品内常識を越える能力を持つキャラクター

いわゆるチートキャラクターですが、注意すべきは「作品内常識を越える」というところです。

いくら新規キャラがチート級でも、作品内にチート級がうようよいたら読者は「またか」と思うだけです。

現実的な人間しかいない世界に突然大魔法を使うキャラクターが出てきたら驚きますが、魔法使いがうようよいる世界で大魔法を使うキャラクターが出てきても誰も驚きません。

このキャラクターによる驚きは作品を通して2-3回しか使えません。

 

 

敵・味方の驚き

味方だと思ったキャラクターが敵だった

いわゆる裏切りキャラです。

そういうそぶりを見せずにいきなり裏切れば、やはり読者は驚きます。

ただ、少しでもそういうそぶりを見せれば読者は一発で見抜きます。

敵だと思ったキャラクターが味方だった

敵だと思っていたら、実は裏側で主人公をサポートしていた人だったという奴です。

うまくすると感動する話にもできます。

敵のボスだと思ったら、その上に更にボスがいた

バトル系作品のテンプレではありますが、序盤でボスに見えていた敵の上に更にボスがいるという設定です。

敵を倒したと思ったらその裏に更に強い敵が居るという驚きを与えます。

敵が居ないと思ったところから敵が出てきた

危険を煽るので読者の注意を強く引くことが出来ます。

「状況を認識できていない」という感情を引き起こして、読者は物語を注意深く読もうとします。

死んだと思った味方が生きていた

崖から落ちて死んだと思ったら生きていた。

爆発に巻き込まれて死んだと思ったら生きていた。

どう見ても刺されて殺されたのに、特殊能力で生き返って生きていた。

どのパターンでも読者に「絶対に死んだ」と思わせておいてから、言い場面で登場させると読者は驚きます。

死んだと思った敵が生きていた

これは味方が生きているパターンよりも驚きは少ないですが、多少の動揺を読者に与えることが出来ます。

 

注意事項

驚きは大切なのですが、やり過ぎると読者が嫌になるというデメリットがあります。

驚きは読者の予測を裏切ることです。

予測を裏切られると読者はショックを受けて、精神的に疲労します。

驚かせまくると言うことは、読者はめちゃくちゃ疲れさせることになります。

軽い疲れなら「いい物語を見た」みたいな爽快感がありますが、疲れが酷すぎると単純に「もうこの物語を見るのはいやだ」となってしまいます。

「ほどよい疲れ」になるレベルに抑える必要があります。

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