小説家になろうのランキングシステムの変更で、全盛期から比べると下火ですが、それでも異世界転生はやはり人気のジャンルです。
どうして異世界転生が人気になったのでしょうか。
それについて軽く考察してみます。
主人公リセット効果
異世界転生でない作品だと、主人公には年齢・性別・社会的立場・交友関係といろいろな物が設定されています。
そうすると、読者は自分の状況と主人公を比較してしまうので、場合によっては感情移入できません。
例えば、自分よりも恵まれた立場の人間には嫉妬してしまいますし、自分よりも余りに駄目な人間でも感情移入できません。
プロの作家は「読者と同じか少し下の人間が一番感情移入しやすい」と言っていました。
つまり、それだけ読者と主人公の相性は難しいのです。
しかし、異世界転生の場合は転生した時点でリセットされるので、主人公の特徴がかなり薄れます。
真っ白なキャンバスとなって誰でも主人公に感情移入しやすくなるわけです。
(主人公の一人語りがあまりに特徴的だったりすると、感情移入できなくなりますが)
理解するのにカロリーがいらない
独自のファンタジー世界、独自の魔法、独自の人間関係、独自の社会、そういった物を描いていて魅力的な作品はたくさんあります。
しかし、そういったものは独自すぎるので理解するのに読者側も努力しないといけません。
新しいことを理解するというのは結構大変なことです。
異世界転生の作品は良くも悪くも形が決まっているので、一つでも作品を知っていればその後の作品を理解するのは非常に簡単です。
理解が楽なので読者が気楽に読みやすく、人気になったと思われます。
読み始めやすい
普通の作品だと序盤で特殊な事情が披露されることが多く、それを受け取るのに少しエネルギーが必要だったりします。
しかし、異世界転生ものは序盤は転生するのがお決まりなので、何が起こるか分かっているので読者は読みやすいです。
読み始めやすい、というのは非常に大事な要素だと思います。
大抵の作品は読み始めてしまえば、そこそこ面白いですが、読み始めるのが大変なのです。
自由度が高い(リアリティが低くてもいい)
現代を舞台にすると、常識・物理的制約に制限されるので展開が制限されます。
もちろん現代を舞台にして常識を無視した展開を書いてもいいのですが、「リアリティがなさ過ぎる」と一蹴されてしまうでしょう。
異世界転生の場合は現代とは違う世界なので、作者が「こういう世界なんだ」と言えば読者はそう思うしかなく、かなり変わった設定や展開でも受け入れてくれます。
つまり、リアリティラインを下げる効果があります。