『感動』を生む物語の部品

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感動という単語はものすごく広い範囲の概念を含んでしまっているのですが、

無茶して全部ひっくるめて説明します。

感動とは

感動とはなんでしょうか。

ただの「泣く」と「感動して泣く」はかなり違います。

悲しければ泣きます。自分が悲しいときや、とても気の毒な人の話を聞いたとき、人は泣きます。

でも、そのときは感動して泣くとは言いません。

「感動して泣く」というのはただの悲しさだけで無く、強い感情の動きがあって泣いてしまったときの言葉です。

感動=「感情が動く」ということですから。

あくまで仮説ですが、複数の感情が同時に発生したときの状況を「感動」と呼んでいると考えられます。

感情は動いているのですが、人は複数の感情を同時に認識できないので、「とても心が強く動いているのに言葉に出来ない」という時に人間はそれを「感動」という言葉で表現しているように思えます。

つまり、感動は感情のミックスであり、バリエーションがものすごく豊富なわけです。

 

不遇の人物が救われるテンプレート

これは「他人の幸福を喜ぶ」という感情を引き起こします。

この言葉に対応する言葉がないので、読者は「感動した」という言葉で表現します。

STEP1:同情させる

感動させるには、そのキャラクターに同情している状態でないといけません。

「よく知らないけど目が見えない人が目に見えるようになった」という話を聞いても、「あーそー。よかったね」程度にしか感じません。

まずはそのキャラクターに同情していなければ、その後のカタルシスはありません。

同情させるテクニックについては、キャラクターに『同情』させる部品で解説しているので見てください。

注意:読者が反感を持つ展開

注意するべきなのが、読者の反感です。

「とても酷い状況」→「いい状況」が基本パターンなのですが、このときに読者が反感を持つ要素があると感動してくれません。

キャラクターが幸運すぎる

読者は「自分よりも幸運」な存在には反感を持ちます。

読者はだいたい自分自信の境遇と重ねて他のキャラクターを見ています。

「自分よりも苦労しているのにこんなに酷い境遇なんて気の毒」とか「自分よりも楽しているのにこんなにいい境遇なんてうらやましい」と考えます。

つまり、「苦労」と「結果」は比例しているという前提があり、「苦労」に対して「結果」が自分よりいい人は「幸運な人」で自分より悪い人は「不運な人」と捉えます。

例えば、超貧乏で食うや食わずで苦しんでいる人を描いたとしましょう。

この人が宝くじで偶然に大富豪になったとします。

「とても酷い状況」→「凄くいい状況」です。

ところがこれは感動しません。

なぜなら、お金持ちになったことに対する苦労は「宝くじを買った」だけであり、その小さな苦労に対して大きな結果を得ているので、明らかに大抵の読者よりも「幸運」な人です。

読者は幸運な人には嫉妬してしまうので、感動しません。

キャラクターの性格が悪い

読者は自分より不運な人に同情しますが、性格が悪いキャラクターには同情しません。

キャラクターの行いが悪い

性格と同じで、行動が悪い場合は同情しません。

キャラクターが正しい努力をしていない

そのキャラクターが貧困から脱出することが目的だとして、そのキャラクターがギャンブルにお金を使っているとか、割のいい仕事に乗り換えようとしないとか、目的に対して正しい努力をしていない状況です。

その場合、読者は「こいつは何をやっているんだ。馬鹿だな」と思って見放してしまいます。

この場合も読者は同情しません。

STEP2:状況が好転する

STEP1でキャラクターに同情させました。

つぎにそのキャラクターの状況を好転させます。

例:努力し続けても腕が上がらなかった剣士→ついに努力の成果が現れる

例:虐げられ続けてきた少女→優しい人に救われる

基本的にこれだけで、「あぁ、よかったね」と読者はじんわり感動します。

しかし、じんわり感動では足りない場合は次のテクニックで感動を高めます。

つらい記憶をフラッシュバックさせる

努力の成果が現れた剣士の例で言うと、つらい練習の日々や他人に見下された記憶をフラッシュバックさせます。

その対比で感動が盛り上がります。

虐げられた少女の例で言うと、虐げられてきた記憶をフラッシュバックさせます。

そのつらい記憶と目の前の救いの対比で感動が盛り上がります。

キャラクターを感動させる

剣士の例で言うと、「おお、ついに練習の成果が出た!」と喜んでいるよりも「ついに……ついに……」と涙を流して喜んでいる方が読者の感動も盛り上がります。

少女の例で言うと、「あなたに巡り会えて光栄でございます」とすまして言うよりも泣きながら感謝を述べた方が読者の感動も盛り上がります。

キャラクターを感動させつつ、それを露骨に表さない表現にする

あまり泣きまくる表現は避けたい場合は、キャラクターが感動しつつもそれを控えめに表現することも可能です。

剣士の例であれば人前では「俺って進歩が遅いなぁ」なんて平然と振る舞っておいて、誰も居ないところで「おっしゃー」と喜びを表現する方法です。

少女の例であれば、表向きは冷静に振る舞いながらも、指が震えているとか、涙がこぼれ落ちるとか、そういう表現です。

こちらのほうがオンオン泣かせるよりも格好良い表現にはなりますが、読者の感動度合いは少し落ちます。

 

考えを変えて決意を固める

いままで違う考えを持っていたキャラクターが、なにかをきっかけに考えを変え、新たな決意を語るシーンは感動を呼びます。

 

「馬鹿だな」といいながら決死の覚悟を決める

主人公が無謀な戦いに挑むとして決意を固めて付いてくる仲間を描写すると感動シーンになります。

そこに更に、「馬鹿だな。だが、俺も馬鹿だ」とか「馬鹿だな。しかし、それがいい」みたいなセリフを言いながら主人公に付き合うということにすると、ひねりがきいてさらに感動できるシーンになります。

※ストレートが受ける人とひねってある方が受ける人がいるので、好き好きですけどね。

 

悪人が良いことをするテンプレート

読者は悪人が悪いことをすると思っているところで良いことをするので、これはまさに「Aと思っていたらBだった」という驚きのパターンです。

そして、この悪人にはいい面があったという救いのある気持ちと、いい出来事が発生したという喜び。

「驚き」と「救い」と「喜び」が混ざり合うことで感情が大きく動き、読者は「感動」という表現をします。

簡単な例としては「ヤクザが電車でお年寄りに席を譲る」といったことです。

 

普段ダメな人が活躍するテンプレート

普段ダメな人が活躍すると、読者に「驚き」と「よかった」という複数の感情が生まれ、感動します。

ダメな人に見せ場があると盛り上がりますよね。

 

自己犠牲テンプレート

サブキャラが自己犠牲をしたとしましょう。

すると、読者の心にサブキャラが失われたという「悲しみ」、主人公が助かったという「喜び」、自己犠牲という尊い行為への「尊敬」といった感情が一斉に発生します。

この混合により読者は感動します。

自己犠牲は使いやすいテンプレですが、やり過ぎると見透かされるので気をつけましょう。

 

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