映画など他作品を元に、基本的なプロットの形をメモっていく記事です。
一幕・二幕・三幕という書き方もありますが、ここでは4つの箱にして説明していきます。
一幕=箱1
二幕=箱2+箱3
三幕=箱4
で読み替えてください。
フラットなアークのテンプレート
「キャラクターから作る物語創作再入門」から引用
主人公は変化せず、主人公が世界や周りを変化させていくプロットです。
個人的に好きなタイプのお話です。
箱1
主要人物と世界の紹介
主人公は真実を知っている
世界や周りは嘘を信じている
ここでは日常を描くが、主人公はその嘘を打破する必要を感じていないので、衝突は起きていない。
むしろ、主人公は衝突を避けようとしている。
(箱1の終わり)プロットポイント1:真実と嘘の矛盾を強く感じる出来事が発生し、主人公が無視できなくなる
箱2
主人公は嘘に対して憤っているが、どうすれば嘘に打ち勝てるか分からない
主人公が真実を主張すると罰を受けるし、周囲からも説得される
主人公は「間違っているのは自分かもしれない」と思ったりもする。
(箱2の終わり)ミッドポイント:主人公に有利な重大な事実が発覚する。敵の真の狙いや能力を知り、嘘のあくどさや強さがわかる。
箱3
主人公は戦うことに躊躇がなくなり、全力で戦う。
主人公は嘘を攻撃して真実を広める。
だんだんと主人公を支持する声が大きくなり、敵は焦る。
主人公は勝利するかに見える。
(箱3の終わり)プロットポイント2:主人公が完全に不利な状況に転落する。主人公が無力感に苦しむ。
箱4
前半:
苦境に対して主人公が反応する
脇役達は真実に気が付いていて、主人公に同調する
主人公が最後の戦いを挑む決意をする
後半:
主人公の「真実」と敵の「嘘」の対決
敵は嘘を主張して主人公に揺さぶりをかけるが、主人公は怯まない
最後:
嘘が滅んでからの脇役達や世界の状況を描く。
修行して敵を倒すテンプレート
「カンフーパンダ」を下敷きとして、修行して敵を倒すプロットのテンプレートを作りました。
このテンプレートを使うと「修行して強くなる」という部分が強調された作品になります。
メインが修行で、敵を倒すことはあくまで結果です。
敵とのやりとりを盛り上げるには向きません。
箱1
世界設定・主人公・仲間の紹介
敵については概要だけ紹介
プロットポイント1までの経緯を説明
(箱1の終わり)プロットポイント1:主人公が修行しないといけない状況になる
箱2
主人公が修行するが、うまく行かない。
(箱2の中盤)ピンチポイント:敵の紹介・敵の強さ描写
敵と主人公が戦うことになると説明される。
主人公が敵わないことが明らかなので、主人公・仲間は絶望的な気分になる。
(箱2の終わり)ミッドポイント:修行をうまくいかせる気づきを得る
箱3
修行が順調に進み始め、主人公が強くなっていく。
(箱3の中盤)ピンチポイント:敵の強さ描写
主人公は強くなったがまだ敵には及ばないことが示唆され、主人公・仲間は絶望的な気分になる。
(箱3の終わり)プロットポイント2:主人公が勝利につながるもう一つの気づきを得る
箱4
主人公が敵と戦う。
勝利する。
仲間や無力な人たちが主人公を賞賛する。
無双テンプレート
「イコライザー」を下敷きとして、無双のテンプレート。
主人公は最初から強いので、修行シーンがありません。
箱1
主人公・登場人物の紹介
下っ端の敵の紹介
プロットポイント1までの経緯を説明
(箱1の終わり)プロットポイント1:主人公が正義のために下っ端の敵を倒す
箱2
主人公が正義のために戦って活躍し続ける(ただしラスボスと関係ない敵)
ラスボスが登場する(ただし、主人公とは会わない)
(箱2の中盤)ピンチポイント:敵の強さ・残虐性の描写
主人公が活躍し続ける(ただしラスボスと関係ない敵)
(箱2の終わり)ミッドポイント:主人公とラスボスが互いに顔を見る
箱3
主人公がラスボスに関係ある敵を倒し始める(無双)
(箱3の中盤)ピンチポイント:ラスボスの正体を調べ、覚悟を決める
(箱3の終わり)プロットポイント2:主人公とラスボスが決戦の宣言をする
箱4
ラスボスとの戦い
そして勝利
負け犬達の逆襲テンプレート
「少林サッカー」を下敷きにしたテンプレート。
負け犬が主人公一人では無くたくさんいるので、仲間集めの場面が必要になる。
箱1
うだつが上がらない指導者の紹介
才能はあるがうだつが上がらない主人公の紹介
主人公がいいところを見せる。
(箱1の終わり)プロットポイント1:指導者が主人公に指導することになる
箱2
主人公が仲間を集めるが、断られる。
仲間は皆負け犬。
(箱2の中盤)ピンチポイント:仲間を集められずに主人公・指導者が落ち込む
断られた仲間達が考えを変えて主人公の元に集まってくる。
最初はダメダメだが、指導者の指導でだんだんとレベルが上がっていく。
雑魚敵と戦ってピンチに陥るが、そこで覚悟が決まり全員が覚醒する。
(箱2の終わり)ミッドポイント:敵(ラスボス)を見せる
箱3
覚醒したので、主人公と仲間達は敵無し。
無双状態で雑魚敵をどんどんなぎ倒していく。
※ピンチポイント2はない
(箱3の終わり)プロットポイント2:敵(ラスボス)との戦いになる
箱4
敵が圧倒的で主人公達は劣勢になる。
主人公側の切り札が展開され、形成が逆転する。
敵を倒し、勝利する。
負け犬の仲間達と負け犬の指導者が救われる。
おまけ:七人の侍
七人の侍のプロットも調べて見たのですが、プロットで見ると意外とメリハリが無くてだらだらっとした様子です。
現代でこれをやると盛り上がりが少なくていまいちかも知れません。
※そもそも長すぎるので四つの箱として考えるのが不適当かも?
箱1
村人の紹介
敵(落ち武者)の紹介
村人が侍を集めに行く
(プロットポイント1)仲間が集まったので出立する
※この仲間集めのシーンがすごく面白いのですが、その分すごく長くて箱1の長さが通常の二倍になっています。そのため、順当に映画全体の長さが通常の二倍になっています。
箱2
侍が村に向かう
村人と仲良くなる
作戦を立て戦闘訓練をする
落ち武者の武器が見つかって侍達が反感を持つが、菊千代の演説で考えを変える。
(ミッドポイント)離れの家を潰すことになって村人が反発するが、主人公がまとめ直す。
箱3
菊千代がコメディ要員としてふざけたりして、比較的平和な日々が続く。
(箱3の中央:ピンチポイント)敵の斥候が現れる
敵の拠点を攻めるが、一人死ぬ。
(プロットポイント2)落ち込んでいる仲間の前で旗を掲げる
※戦闘の開始が箱の区切りでは無く箱の真ん中から始まっている。かなり特殊な気がする。
箱4
最終決戦。
※最終決戦だけど、見てみると分かるけどこの中に緩急があって一本調子では無い。
おまけ:魔法少女まどかマギカのプロット
普通のテレビアニメは三幕構成になっていないですが、まどかマギカは完全に三幕構成になっていたので、解析してみます。
やっぱり面白い作品は三幕構成を使っているようです。
○感情曲線
箱1の最後プロットポイント1でがくっと落として、そのまま最後まで落とし続けている。落としに落としたところで大逆転って奴。
○プロットの中心はさやか
アニメを実際に見ているとほむらとまどかが主人公に見えるけど、プロット上で見ると中心はさやかになっている。(プロットと実際のアニメの印象が違うのがとても不思議)
基本的に「まどかの親友のさやかが魔法少女になって絶望して魔女になって倒される」というストーリーが展開していて、そこにまどかやほむらが絡む感じ。(三幕からさやかがいなくなるのでただのサブキャラに感じるけど)
プロットで見ると、脚本家が「とにかくさやかを絶望させて魔女にしてやる!!」という執念を感じる(笑)
○杏子
アンコこと杏子はさやかをより絶望させるために登場させているキャラクター。
杏子がいないと二幕がスカスカになる上にさやかが突っ走る理由が弱くなってしまう。
杏子の役割はさやかを絶望させることだけなので、さやかがいなくなるときに杏子も一緒に死んでしまう。
脚本家、まじで鬼!(褒め言葉) 脚本家の虚淵玄はキャラクターのことをプロットのための部品としか思っていないことは確実(笑)
「このキャラクターの用は済んだからここで殺しちゃおw」みたいな気分で脚本を書いているに違いない(汗;
○プロット上は意外と裏設定をチラチラみせている
まどマギは10話で視聴者があっと驚くわけで、プロット上も隠しまくっているように思うが、実はけっこう見せている。
序盤で決定的なシーンを見せている。話の途中でも明確に語っていないだけで結構ネタばらしをしている。
脚本的には「タイムループを絶対に隠し通す」という感じでは無く「まぁばれてもいいけどね」くらいの温度感で作っている気がする。(それでも我々観客は脚本家の視点で見てないから気が付かないんだけど)
○毎週アニメ独特の配慮=毎話の見せ場
映画と違って一話ごとにみるものなので、各話に必ず見せ場を作ってある。
基本的には魔女との戦いや、魔法少女同士の戦い。
箱1(1-3話)
1話:
序盤で10話で分かる真実の一部を観客に教えちゃう。
主要人物の登場(まどか・さやか・ほむら・まみ・QB・マミ)(サブ:仁美)
見せ場:魔女空間の出現シーン・マミさんの魔法
2話:
設定の説明(魔法少女のこと・脳内会話のこと・魔法少女同士の競争のこと)
魔法少女になるかどうか、まどかとさやかが悩む
マミさんが魔女を倒す←魔女を観客に見せる
見せ場:マミさんの魔女戦
3話:
恭介の登場←サブキャラだから登場を遅らせている
まどかが魔法少女になる方に傾く
(箱1の終わり)プロットポイント1:マミさんが魔女に殺される
見せ場:マミさんの魔女戦(死)
箱2(4話ー6話)
4話:
恭介の病気を致命的にしてさやかが魔法少女になる理由を作る
まどかと仁美が魔女に襲われる
さやかが魔法少女になってまどかと仁美を助ける
見せ場:さやかの戦闘シーン
5話:
恭介が演奏することでさやかが救われる←直後に落とすための上げ要素
(箱2の中盤)ピンチポイント:ほむらが「さやかのことは諦めて」とまどかを絶望に落とす
さやかと杏子の衝突
見せ場:さやかと杏子の戦闘シーン
6話:
ラスボス「ワルプルギスの夜」について話す
(箱2の終わり)ミッドポイント:魔法少女がゾンビ状態だということが分かる
見せ場:なし
箱3(7話ー9話)
7話:
さやかと杏子の交流シーン
仁美が恭介に告白すると言って、さやかを追い詰める
さやかが壊れる(痛みを消して無謀な戦いをする)
8話:
さやかがまどかと喧嘩する
(箱2の中盤)ピンチポイント:ほむらがさやかのことを殺そうとする
さやかが魔女になる
9話:
魔法少女は魔女になるというネタばらし
エントロピーの説明(主題では無いけど説明しないといけないので、箱4に入る前に説明しておく)
さやかを助けようと杏子とまどかが向かう
(箱3の終わり)プロットポイント2:さやか消滅・杏子死亡(←いらないキャラクターを一斉に片付けている)
箱4(10-12話)
10話:
ほむらがタイムループしてきたことのネタばらし回
11話:
さやかの死を悲しむ場面
ワルプルギスの夜の登場
ほむらとまどかの会話
ほむらがワルプルギスの夜に挑むが全く歯が立たない
12話:
前半:まどかが円環の理になる描写
後半:円環の理があたりまえになった世界の描写
おまけ:君の名は。
君の名は。を見たので、プロットに分解してみました。
普通の日常描写が無くて、いきなり入れ替わりから始まっているのがユニークです。
箱1
男女主人公二人が入れ替わった日常を紹介
周辺人物の紹介
キーアイテムの口噛み酒の用意
(箱1の終わり)プロットポイント1:「私たち入れ替わってる~」
箱2
紐と時間の話(おばあちゃんの説教)
口噛み酒の設置
(ピンチポイント)入れ替わりが起きなくなる
男主人公の恋愛対象が職場の先輩からヒロインに変わる
(ミッドポイント)ヒロインが死んでいることが分かる
箱3
男主人公が口噛み酒を飲んでまた入れ替わる
街を救うための作戦
(ピンチポイント)ヒロインの父親との交渉に失敗する
世界の狭間みたいなところで二人が会う
(箱3の終わり)プロットポイント2:お互いに名前を書いて消える
箱4
街を救うための作戦を実行
(結果を省略)
五年後に再開してハッピーED
おまけ:クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望
二幕に当たる箱3で物語が一回終わり、箱4でもう一回物語が始まるのがすごく特徴的。
箱2と箱3は完全に吹雪丸の物語になっていて、箱4でしんのすけが主人公に切り替わる。
箱1
タイムパトロールの描写
野原一家がタイムスリップ
吹雪丸と出会う
(プロットポイント1)雲黒斎を倒すたびに出る
箱2
敵側の描写
日常的な描写(侍・茶屋)
吹雪丸が女というほのめかし(吹雪丸がみさえの横で寝る)
吹雪丸の過去の記憶
中ボスとのバトル
みさえとひろしが封印される
(ミッドポイント)吹雪丸が女だとわかる+言い伝えの説明
箱3
中ボスバトル
城に攻め込む
(ピンチポイント)シロが「これは敵の罠」という
中ボスバトル
ラスボスバトル
箱4
もとに戻った戦国時代の描写
おかしくなった現代の描写
ラスボス戦(一度ピンチになってから勝つ)