超初心者のための小説の書き方入門 PART3 ~一人称と三人称~

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小説でよく話題になる「視点」とはカメラのようなものです。

 

読者はどこからその世界を見ているか、ということです。

 

昔の文学や海外文学では意外と適当だったりしますが、現代の一般読者向けに書くならここはきちんと押さえておいた方がいいです。

 

読者に違和感なく読んでもらうなら必要な知識です。

 

※逆に言うとあえて破ると違和感を出すことができます。

 

目次

一人称視点

登場人物の一人になって物語を見る視点です。

本当にあった出来事を作文するのと同じ書き方で書けるので、初心者にもお勧めです。

 

例:

 私は机の上のハサミを手に取った。

 錆びていてかなり古い物に見えた。

 これをリサイクルショップに持っていっても突き返されるだろう。

 振り返ると、知らない女が私を見ていた。

 

初心者でも視点のブレが発生しにくく、間違えずに書きやすい視点です。

そして、書きやすいというだけではなく、視点になっている人物の心の声をストレートに描けるという利点があります。

出来事を書くだけで無く、登場人物の心情を書き込みたいときにとても便利な視点です。

 

一人称は作者が主人公になりきって書くという特性上、深い人格を書きやすい一方で、長期間にわたって連載すると書きにくさを感じることがあります。

例えば、作者が引っ込み思案で主人公にも同じ特性を載せたとします。

連載当初は作者の性格をそのまま書けば良かったとしても、一年以上の連載をしていると作者の方も社会経験とかでだんだん性格が変わって引っ込み思案が改善したりします。

すると、最初は主人公と作者が近しかったのに、だんだんと作者と主人公の距離が離れていきます。

作者は主人公になりきるのがだんだん難しくなっていって執筆に支障を感じるようになります。

長期連載してみて初めて分かるデメリットです。

 

三人称単一視点

この視点は、カメラが特定の登場人物の頭の上に浮いているイメージです。

 

例:

 浩(ひろし)は机の上のハサミを手に取った。

 浩はその錆びているハサミを見てかなり古い物だと考えた。

 浩はこれをリサイクルショップに持っていっても突き返されるだろうなどと考えたりした。

 浩の後ろで、女が男の姿をじっと見ていた。

 

地の文の主語が「私」ではなく「浩」になっています。

そして、この視点は一人称より少し自由で、頭の上で角度を変えることが許されています。

この文章をよく見ると、主人公の浩が見えないはずの「女」を描写しています。

一人称だと振り向かないと見えないのでこういう描写は許されませんが、三人称単一視点だと許されます。

 

一人称と違って少し離れたところから見るので、作者は主人公になりきる必要がありません。

そのため、一人称のように「主人公になりきれない」という問題を抱えずに済むので、長期連載しやすいという傾向があります。

ただし、主人公になりきれないので、主人公の感情をダイレクトに感じれないような感覚があり、そこがデメリットです。

 

三人称複視点

この視点は、その場所をカメラが自由に動けるという視点です。

 

例:

 浩(ひろし)は机の上のハサミを手に取った。

 浩はその錆びているハサミを見てかなり古い物だと考えた。

 浩はこれをリサイクルショップに持っていっても突き返されるだろうなどと考えたりした。

 一美(ひとみ)はハサミをしげしげと見る浩を見ながら、なんでそんなに真面目にハサミを見つめているのだろうか、不思議に思った。

 

最後の文で視点が一美に移動しています。

先ほどの三人称単一視点では、浩の頭の上から見ていて浩の頭の中しか分かりませんでした。

しかし、三人称複視点だと、その場の登場人物全ての頭の中を覗けます。

この視点だとその場の全ての人物の考えが明らかになってしまうので、ミステリーには不向きです。

大勢の人物の考えを説明できるので、群像劇のような作品には適しているでしょう。

 

ちなみに、海外作品ではこの三人称複視点の作品がかなりあります。

ただ、日本人は特定の人物に感情移入しながら読むので、複数の人物の感情が描かれるこの視点の作品は「読みにくい」と思われてしまう事が多いです。

そもそも、書くのが難しいので、初心者にはお勧めしません。(多分破綻します)

初心者にはお勧めしませんが、中級者以上であれば複雑な物語を書く場合に使うこともあるでしょう。

 

その他視点

他にも二人称という「あなたは○○をした」という特殊な書き方があります。

その他にも私もあなたも知らないようなとんでもない視点の作品が世の中にはあるでしょう。

しかし、そう言った物はここでは扱いません。

普通は、そんな視点は使わないので……

 

注意事項

どの人称を使うかは自由ですが、大切なのは一貫性です。

初心者の書いた作品では、一行目が三人称単一視点、次の行が一人称、みたいなことがよくあります。

どうしても視点を変える場合は、章を変えてください。

一つの章の中で視点を変えるのは読者を混乱させてしまいます。

 

作品の種類と視点

書きたい作品が真面目な作品なら、一人称でも三人称でも問題ないですが、コメディ・ギャグだと視点に注意が必要です。

主人公がツッコミ役ならどんな視点でも問題ないのですが、ボケ役だと一人称ではつらい部分が出てきます。

主人公がおかしい様子というのは本人には分からず、外から見ての評価になります。

なので同じ場面であっても、一人称で書くとおかしさが分かりにくくなってしまいます。(無理というわけでは無いですが、大変)

ボケ役の主人公の時は視点に要注意です。

 

応用編

章の中で複数の視点を使うと読者が混乱しますが、章が変わるときに人称を変えても通常は大丈夫です。

「転生したらスライムだった件」とか「無職転生」といった人気作品も、一人称+三人称の混合視点です。

基本的には一人称で物語を進めていって、主人公が知り得ない情報(世界設定とか)を書くときに三人称にスイッチしています。

主人公になりきるには一人称が一番いいですし、多くの出来事を書くには三人称が適しているので、その両方を一つの作品で使い分けしています。

 

神様視点で分かりにくくなった作品の例

知り合いの作品を読ませてもらったときに見つけた問題です。

その作品は大量の人物を出場させ、それを全て均等に描いていました。(主人公不在)

そのせいでわかりにくい上に、感情移入も出来ない話になっていました。

(最近のキャラクターが多すぎるソーシャルゲーム原作のアニメの欠点に近い)

 

○キャラが多すぎる

まず、大量の人物を出すこと自体が問題です。

作者は数ヶ月かけて物語を構築するので大量の人物でも把握できるでしょうが、読者はそれを数時間で読むので、そんなに大量の人物は把握できません。

物語を把握できなくなった時点で読者は興味を失って「どうでもいいや」となってしまいます。

 

○視点がどのキャラにも寄っていない

人が物語を読むときに、せいぜい数人のキャラクターにしか感情移入できません。

なので、大抵の作品は主人公及びメインキャラを設定して、その他のキャラクターはゲスト・モブとして扱います。

ところがその作品は大量のキャラクターの扱いが完全に均等でした。

誰にも注目していいか分からないので、感情移入も出来ません。

(細かく言うと地の文の問題とかもあるのですが、そこは省略)

 

○まとめ

この作品を見て感じたことですが、以下は鉄則だと思います。

・キャラクターを出し過ぎない。どうしても人数が多いときは、メインとサブにわけて、メインキャラを重点的に描くようにする。

・視点を少数の人数に限定する。十数人の視点を一気に描かれても読者は理解できません。

 

 

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