ワンピースはアニメはある程度見たことあったのですが、マンガを読んだことがありませんでした。
マンガで第一話を読んでみて、ものすごく良く出来ていたのでちょっと解説します。
「箱1」の役割を完璧に果たしている第一話
「箱1」といっても、意味が分からないと思いますが、工学的ストーリー創作入門という本で解説されている考え方です。
映画で言えば第一幕(全体の25%)に相当します。
「箱1」の目的は、主人公・人物・世界背景を説明して本編が始まる準備をすることです。
この一話はその役割を完璧に果たしています。
酒場や風景で世界の文明レベルが分かりますし、海賊王の話もありますし、悪魔の実でゴム人間になってしまうことも説明しています。
そして、主人公が「自分で海賊になる」という目的を持つに至ったエピソードも説明しています。
本当によく出来ています。
これが映画だとしたら、話全体が第一話の4倍の長さで収まることになりますが、連載作品なのでずっとずっと続くことになりますが……
運命の人との出会い
ルフィが「自分で海賊になる」という目的に至った原因として、運命の人との出会いを描いています。
運命の人というと、恋愛相手みたいになってしまいますが、簡単に言うと「人生を変える人物」のことです。
シャンクスはルフィの運命の人なわけです。
腕を犠牲にして命を救ってくれて、強くて憧れの対象です。
「箱1」の役割は物語本編が始まる準備なので、別にこの形である必要は無いのですが、運命の人をつかったこのパターンは非常に強力です。
そして、このエピソード単体で面白いのが素晴らしいです。
「箱1」は準備段階なのでそこだけでは面白くなくても仕方ないのですが、その準備段階が面白いというのは本当に素晴らしいです。
山賊の使い方
ヒグマという山賊が出てきますが、これも扱いが素晴らしいと思います。
この山賊がいない場合でも、シャンクスが海のモンスターから命を救ってくれるだけでルフィにとっての「恩人」ということで運命の人になります。
しかし、それだけではシャンクスとその一行の格好良さを十分に描ききれません。
そこで、山賊を出してそれを倒すことで格好良さを演出しています。
さらに、山賊が出た途端に倒さず、最初はあえて争わずに後半で倒しています。
どんな敵でも出た瞬間に倒してしまうと読者の印象に残らないので、敵を登場させてから退場するまでの期間を長くするいい手法だと思いました。
運命の人の背中を追いかけるテンプレで先を期待させる
幼少期の終わりは、シャンクスという運命の人を追いかける形になっています。
このことにより、読者はルフィの未来がうっすらと想像できます。
シャンクスのように海賊になるだろうし、強くなるだろうとも想像できます。
このうっすらと想像できるというのが大事で、読者は「盛り上がる展開になりそうだ」と期待します。
その期待が生じるので続きがあるので読者は読む気になります。
もしこれが「こんなことがあったなぁ」という思い出話で終わってしまったら、読者はルフィがこの先どうなるという予測ができない(期待しない)ので、続きを読む動機がかなり薄くなってしまいます。