「快感」なんていうと、なにか嫌らしい感じがしますが、絶対に大事です。
読んでいて快感が一切無くひたすらつらいだけの物語なんて、ごくごく一部にしか受けません。
特にエンタメ作品は楽しむのが目的ですから、快感は超絶重要要素です。
エンタメ作品の快感には二種類あります。
一つ目は、その作品を読む前から持っていた願望の成就です。
「金・権力・女」のようなものや、その人の趣味、フェチっけのある願望(女体化とか)等です。
「金・権力・女」は共通項なので、たいていの人に理解できますが、趣味や特殊な願望は人によるので特定のタイプの人しか理解できません。
二つ目は、その作品の中で読者が抱く願望の成就です。
例えば気の毒な主人公がいて、読者が救われて欲しいと思っています。そのときに、目の前にチャンスが訪れて主人公が救われると、読者は快感を得ます。
これはその人の趣味や好みは関係なく、作品を見ていれば共通で抱く願望です。
初見の人の興味を引きやすいのは一つ目の願望の成就です。
「ロリといちゃこらしたい」「男の娘が好き」「金持ちになって札束で頬をビンタしたい」は作品を読む以前からの願望なので、概要を説明された時点で「自分の好みだ。見よう」となります。
作品を見る前には二つ目の願望を抱いていないので、その願望の成就を語られてもピンと来ません。
魅力的な異性
ありきたりですが、鉄板です。
男主人公なら魅力的な女性キャラ、女主人公なら魅力的な男性キャラを登場させれば、それだけで楽しく感じます。
軽いテイストの作品なら好き好きアピールを強調しまくる描写を入れられるので、簡単に快感を作れます。
(魅力的な異性が)
・登場する
・主人公を誘惑する
・主人公に惚れる
・主人公に好き好きアピールする
・主人公と付き合う
・(視覚)フェチな部位を露出する(ふともと・鎖骨・うなじetc)
・(聴覚)甘い声を出す
・(嗅覚)良い匂いがする
・(触覚)触れてドキドキする
エロいこと
鉄板ですね。
軽いエロからがっつりした濡れ場まで、基本的に快感になります。
ただし、あまり露骨だと嫌がる人もいるので、作風に合わせて程度は工夫しないといけません。
※意図的でもハプニングでもどちらでもOK
・裸に近い格好を見る
・裸を見る
・キスをする
・肌に触れる
・縛るなどして拘束する
・密着する
・(R18)性行為をする
権力
権力を手に入れることも快感です。
配下
自分の下に優秀な部下がつくことも権力欲を刺激します。
慕う領民達
自分の下にいる者達が自分を慕うと自己承認欲求が満たされます。
取り組んでいたことが成功する
「異世界食堂2」のアニメを見ていて、偶然扉を見つけてしまうキャラクターが連続して出てくる中、依頼を受けて扉を探し当てたキャラクターの話が特に面白く感じました。
なぜかと考えてみると、このことにたどり着きました。
偶然扉を見つけた場合、そのキャラクターにとっては「なんだこれ?」という疑問以外の感情は湧きません。
しかし、そのキャラクターは依頼を受けて意図的に扉を探しているので、扉にたどり着くまでの過程で「見つからない」という焦燥感や「見つかった」という喜び(快感)が湧きます。
このように、キャラクターが何かに取り組んで何度か失敗・停滞した後に成功する姿は読者にも快感を感じさせます。
劣勢側が活躍する
判官贔屓とでも言うか、二つの勢力が争っている場合、劣勢側に感情移入しやすいです。
その劣勢側が思いのほか活躍すると胸が空くような快感を感じます。
強い方が活躍しても特に快感は感じません。
他者が主人公を丁重に扱う
他者が膝を折って忠誠を誓ったり、呼び名に最大限の注意を払ったりすると、他者の敬意を感じて気持ちよくなれます。
褒められるor驚かれる
褒められると驚かれるが同じカテゴリーだと言うことに違和感を持つかも知れませんが、実は同じカテゴリーです。
例えば、主人公の容姿が優れていたとしましょう。そのときに、キャラAは「これはこれはお美しい」といいましたが、キャラB「これは……なんとも……」と目を丸くして驚いています。どちらが快感を生むでしょうか。
明らかに後者です。
普通に褒められる場合は「冷静に受け取れる程度の素晴らしさ」で驚いている場合は「素晴らしすぎて冷静で居られない」ということですから、後者の方が度合いの強い褒めになります。
快感を優先するなら、サブキャラ達を驚かせまくりましょう。
容姿
主人公の優れた容姿に驚くサブキャラが居ると、盛り上がります。
能力
主人公の能力に驚く展開は、なろうテンプレに含まれていますが、やはり効果的です。
知識
主人公の知識に驚く展開。これもなろうテンプレに含まれています。
持ち物
主人公が持っているレアアイテムに驚く展開。
これもなろうテンプレに含まれています。
こうみると、なろうテンプレ、恐るべきって感じですね。
更に効果を高める
キャラクターが「なんてすごいんだー!」と驚くだけでも快感ですが、相手が見くびる動作を加えると快感のコンボが決まります。
1,キャラクターAが主人公を見くびる
2,(読者)キャラクターAに不快感を持つ
3,キャラクターAが主人公の実力を知って驚く
4,(読者)主人公の実力を驚かれて快感を感じる
5,キャラクターAが主人公に謝る
6,(読者)不快感を感じていたキャラAが主人公の下に下って満足
いろんなところで見る鉄板パターンですね。
※アイテムでも同じです。「所詮その程度だろう」→「思っていたよりSUGEEEE」
師匠に褒められる
厳しい師匠からついに認められると大きな満足感と快感が生まれます。
厳しい師匠も快感に使えます。
強くなる・成長する
いわゆる成長です。
ゲームのレベルアップの快感もこれと同じで、今まで苦労していた敵をあっさり倒せるという快感が発生します。
これを表現するためには、以前は出来なかった・かなり苦労したという描写が必要です。
いきなり楽勝という描写をしても、このレベルアップの快感は感じません。
強いキャラクター・強い敵が仲間になる
強いキャラクターが仲間になることは自分が強くなることに近いので、やはり快感が生まれます。
とくに元々強敵だったりすると、読者はその強敵としての強さを思い知らされているわけですから、なおさら盛り上がります。
名作RPGでも強い敵が味方になる展開は盛り上がるシーンになっています。
成長の実感
成長して強くなっていっても、それを描写しないと気持ちよさにつながりません。
他者に「すごい成長だ」と言わせるとか、主人公が「成長を実感する」と心の声で言うとか、なにか描写が必要です。
他者に出来なかったことが主人公/メインキャラに出来る
これは他者と主人公・メインキャラを比較させて優位性の快感をえることができます。
まず他者がやろうとして出来ないという描写をしてから、主人公・メインキャラがそれを実現するという描写にする必要があります。
いきなり主人公があっさりそれを実行しても快感は発生しません。
人を助けて感謝される
人間は感謝されるのが大好きです。
人を助けて感謝されるシーンを作ることで、読者が快感を感じます。
特に感動シーンと組み合わせることで、感動と快感が組み合わさってかなり強いシーンになります。
『感動』を生む物語の部品を見ていない人は読んでもらえると参考になるでしょう。
この記事で書いたように、感動の基本型は「気の毒なキャラAに同情させ、キャラAの状況が好転してキャラAが感動しているシーンを描く」ということです。
そのときにキャラAの状況が好転する原因を主人公の行動と言うことにします。
「気の毒なキャラAに同情させ、主人公の行動によりキャラAの状況が好転してキャラAが感動しながら主人公に感謝を述べる」ということになります。
実は水戸黄門でおなじみのパターンです。それだけ読者に快感を与えてくれる黄金パターンということです。
さらに応用パターンとして、主人公が他人の世話をするが主人公と相手の常識が異なっていて、主人公が何の気もなしにした世話が相手に取って想像以上であるというパターンもあります。
これをやると、相手が驚いてくれた上に感謝までしてくれるので、快感が二重がけになります。
こちらの世界の物が活躍する
異世界物で使えるパターンで、日本や地球の物が異世界で活躍するパターンです。
極端に言ってしまうと主人公は読者にとって他人なので、感情移入できないと主人公が無双しようが苦しもうがどっちでもいいと思われてしまいます。
しかし、日本や地球の物は読者の感情移入にかかわらず読者側の世界に属する物ですから、それが活躍すると感情移入できていない読者でも楽しさを感じることが出来ます。
日本SUGEEE・地球TUEEEはお手軽に読者に快感を感じさせることが出来ます。
主人公に大金を投じる他者
主人公のために大きな代価を払う他者がいるとなんだか気持ちよくなります。
・主人公に会うためだけに大金を払う人
・主人公に惚れてしまって、主人公へのプレゼントに大金を費やす人
特に女性主人公の場合、イケメンの男が主人公にいろいろ買ってくれるというシーンはお決まりの気持ちいいシーンです。
主人公の持ち物を求めて大きな代価を払う他者
主人公を求めるのと同じパターンですが、持ち物でも同じように気持ちよくなります。
・主人公の大したことない持ち物にとんでもない価値を感じて、散財・苦労をしてそれを手に入れようとする人
(異世界食堂で日本で千円~二千円くらいのお菓子に金貨を払う異世界人)
・主人公のスキルにとんでもない価値を感じて、散財・苦労をしてそれを手に入れようとする人
(主人公の治癒魔法を求めて全財産を費やして主人公を探す異世界人)
敵が悔しがる・負け惜しみを言う
憎むべき敵がいる作品の場合、その敵が悔しがったり負け惜しみを言うと勝利が実感できて気持ちよくなります。
ただし、敵が悪人では無く、普通の人や善人として描かれていると、読者は気持ちよさよりも気の毒さを感じます。
敵を悔しがらせて快感を得るには、敵をきちんと悪人にしておかないといけません。
敵が無様な目に遭う
憎むべき悪役を作ることができれば、読者はその悪役に対してヘイトをためます。
なので、その敵が酷い目に遭うと溜飲が下がって快感を感じます。
「最悪な死に様」「屈辱的な目に遭う」「社会的立場が最低に落ちる」など。
これをやるためには、読者が敵を憎むような描写を入れる必要があります。
起こって欲しいことが起こる
冒頭で解説した「二つ目」の快感です。
物語の中で起こって欲しいことを事前に読者に伝えておきます。
・何日の何時に仲間が騒ぎを起こして看守達が居なくなるから、その時に逃げるぞ!
→実際に看守がいなくなる。読者が「やったぞ!」と快感を感じる。
・普通は出会えない相手の通り道を調べて待ち伏せしよう。でも、実際に出会える確率は低い。
→何度目かの挑戦で、ついに出会う。読者が「ついにやった!」と快感を感じる。
この例でも分かるように、「100%そうなる」ことではなく「失敗する可能性がある」出来事が起きたときに快感を感じます。(ギャンブルと同じ)
「99%勝てる相手に勝ちたい!」という願望→実際に勝ちました では、全然快感を感じません。
「勝てる確率は絶望的だけど、それでも勝ちたい!」という願望→実際に勝ちました というのが快感になるのです。
ただし、あまりありえないことを起こすと読者が冷めるので、うまく読者を納得させる必要はあります。
上位者が仲間になる
仲間になると言うことは、その相手に認められると言うことです。
また、強い人間であればその人の力が自分側に付くと言うことです。
これは快感になります。
●上位者
・容姿に優れる:美少女・美女・美青年・イケメン
・能力に優れる:ドラゴン・魔王・超強い魔族・悪魔・神様・英雄・勇者
・強い権力:魔王・王様・高位貴族
主人公や読者からみて下位の者だと快感にはなりません。
「使い物にならないダメ人間の村人Aが仲間になりました」と言われても別に嬉しくないですよね。
この場合はその人間を助けると言った面倒ごとが増える方向なので、主人公にとってはストレスになります。