小説を書く上でリアリティについて

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今回は緩く行きます。
以前に「小説家になろう」に投降した内容をリライトした記事です。

というわけで、リアリティについて考えましょう。

リアリティ。

重要ですよ、リアリティ。

年齢を重ねるごとにだんだん大事になるリアリティ。

疑うことを知らない素直な子供の時は全く気にならなかったリアリティ。

しかし、歳を重ねるごとに現実と対比しつつ小説を読むようになるこの不思議。

なんなのでしょうか。

はっきり言って、リアリティなんて無視して全部まるっと信じられれば作者も読者も大変幸せなことに違いないのですが、どうにもそういうわけにもいきません。

作品にリアリティがあると、こういう利点があります。

1,(読者)「嘘臭い!」と思わないので、読んでいて引っかかる点・冷めてしまう点がない

2,(読者)入り込みやすくなる。(信じられる)

3,(作者)登場人物にリアリティがあるということは、登場人物が自然な反応をするということなので、作者にとってはある意味書きやすい。
→デメリット:ぶっ飛んだ人物を書きにくい。分からない人物は書けない。プロット通りに動かない。

逆にリアリティが低いと、読者は冷めてしまったり、物語に入り込めなかったり、作者がその登場人物の動きを想像するのが難しかったりします。

こういったことから、リアリティが低い作品よりもリアリティが高い作品の方が無難だと言えます。

目次

◆今回のお遊び

メインキャラ・モブキャラ・世界設定それぞのリアリティをいじってみます。

リアリティを変えると見え方がどう変わるのか、体感してみてください。

○メインキャラのリアリティ

外見とか設定とかももちろんありますが、一番大きいのは出来事に対する反応のリアルさです。

ありえないアクションをするとその時点で「あーこれ物語だ」とゲンナリしまいます。(「もうちょっとうまく騙して!」かな)

ちなみにそのレベルは人それぞれなので、中学生の頃の自分のように素直だと相当変なことが書かれていても納得してしまいますが、厳しくなるとちょっとでも納得出来ない点があると納得できなくなります。

しかし、あまりにリアルすぎる反応だと普通すぎてつまらなくなるという問題もあります。

○モブキャラのリアリティ

勇者・魔王の世界で言えば、王様とか村の人です。

この人らも実は結構大事です。

ファンタジーだとメインキャラはだいたい変な奴らです。

しかし、モブたちまで変だと物語が地に足がつかなくなってしまいます。

正常な人たちの中に変わった奴らがいるのであれば「そんなこともあるかな」と想像できるのですが、メインもモブも全部「こんなやつらいない……」となるとなかなかついていけなくなります。(ついていけるひとはついていけます)

例として、王様がありえないほど気さくで中学生みたいなセリフを言っていると「その世界を信じろ」と言われてもなかなか信じられません。

しかし、これもリアルすぎると平坦でつまらなくなるという問題があります。

○世界設定

ものすごく簡単にいえば「物理設定が生きているか」ということです。

現実と違ってもいいですが、その世界の法則には従っているかどうかです。

その世界の法則に従って頭で演繹した結果と違う事が起きているとNGです。

絶対勝てないはずなのに気合でなんとかなっちゃうとか、どう考えても死ぬはずなのに死なないとか、蘇生魔法があるのに人口爆発してないとか。

(しかしそれではファンタジーなんてかけないので、そういう状況を成り立たせる設定を考えるわけですな)

しかし、これも真面目にやり過ぎるとなんにも書けなくなります。

「設定は魔物」という言葉を聞いた覚えがあるのですが、設定に対して真面目になりすぎると設定に物語が食われてしまうらしいです。

「設定に合致していて面白い物語」であれば良いのですが、「設定に合致してるけどつまらない物語」を書いても誰も幸せになりません。

ということで、このあたりもさじ加減ですよね。

何事にも例外はあると思いますので、上記は「私個人のなんとなくの肌感覚」レベルです。

 

◆リアリティレベルを変えてみた実験作品

■メインキャラ:現実的 モブ:現実的 世界設定の順守:100%順守

————————–
 目の前をカップルが仲良さそうに歩いていた。

 つい大声で叫んでしまった。

「リア充、爆発しろ!」

 しまった、と思ったが遅かった。

 その声が聞こえたらしく、目の前のカップルは歩みを止めて振り返り、怪訝な顔をした。

 カップルはすぐに視線をそらし、俺を無視するように歩き出したが、他の通行人も怪訝な顔を向けてきた。

 なに言ってるんだ俺は……。
————————–

○コメント

もしそんなことを言ってしまったとしたら、誰もかれも怪訝な顔をするでしょうし、主人公もそれを恥じるでしょう。

そもそも現実的に考えれば、そんなセリフを大声で叫ぶこと自体がナンセンスなんですが、そこはスルーしてください。

本当に現実的に考えすぎると物語のきっかけすら起きないので。

そしてこのパターンは普通に書くと、ご覧のとおり全くおもしろくありません。

現代では「そこらにありそうなちょっといい話」ぐらいが限度かもしれません。

時代小説などになるとこのパターンでも大きな話がかけますけど。

■メインキャラ:非現実的 モブ:現実的 世界設定の順守:100%順守

————————–
 目の前をカップルが仲良さそうに歩いていた。

 そこで大声で叫ぶことにした。

「リア充、爆発しろ!」

 その声が聞こえたらしく、目の前のカップルは歩みを止めて振り返り、怪訝な顔をした。

 カップルはすぐに視線をそらし、俺を無視するように歩き出したが、他の通行人も怪訝な顔を向けてきた。

「くくく、そんな世間の目には負けはしない! 何度でも言う、リア充爆発しろ!」

 カップルは今度は振り向かないで歩く速度を上げた。

「リア充、爆発しろーーー!!」

 俺の叫びは街中にこだました。
————————–

○コメント

主要キャラである主人公が非現実的な行動をします。

その世界(この場合現代社会)でやらないだろうという行動をします。

その世界の常識と異なる行動をする理由が、きっちり語られていれば(精神病とかストレスとか)それはそれで現実的な行動です。

ここでの非現実な行動とは、理由の説明もなく行われるその世界の常識から外れた行動です。 

モブは現実的な行動するので、対比される主人公がどんどん痛くなっていきます。

イタイ主人公を書くならこのパターンが最強かも。

■メインキャラ:非現実的 モブ:非現実的 世界設定の順守:100%順守

————————–
 目の前をカップルが仲良さそうに歩いていた。

 つい大声で叫んでしまった。

「リア充、爆発しろ!」

 その声が聞こえたらしく、目の前のカップルは歩みを止めて振り返った。

 男のほうが

「うるせー! 黙れ! 俺達は爆発しない!」

 と大見得を切った。

「いーや、爆発するね!」

 そう言いはると、今度は女が

「私達のあつあつぶりをみたあなたが爆発しちゃうかも。うふ」

 と男に抱きついた。

「うをおおおお、爆発しろおおおおお!!」

 俺の叫びが虚しく街中にこだました。
————————–

○コメント

実際に街中で知らない物同士がこんな発言しないよね。

いや、100%無いとは言えないけど、普通はしないよね。

もはやこうなるとナンセンスギャグだ。

実際にこんなノリの小説も意外とあるんですけどね。

昔の自分の小説とかこんなノリだったり。

■メインキャラ:現実的 モブ:現実的 世界設定の順守:全く考えていない

————————–
 目の前をカップルが仲良さそうに歩いていた。

 つい大声で叫んでしまった。

「リア充、爆発しろ!」

 その瞬間、目の前の男と女は爆発し、爆炎と煙が上がった。

「え?」

 呆然と立ちすくむ俺。

 周りを歩いていた人々も何が起こったかわからない様子で呆然としている。

 しかし、誰かが悲鳴を上げた。

 それにつられたように幾つもの悲鳴が上がり、人々は我先にと逃げ出した。

 俺は混乱に陥りながらも、他の通行人に少し遅れて逃げ出す。

 一体なにが起きたんだ。
————————–

○コメント

メインキャラもモブキャラもリアルでも、世界設定を順守しないと酷いことになります。

この場合、物理法則を無視しています。

ナンセンスギャグには持ってこい。

もしかしたらホラーもこのパターンかもしれませんね。
(メインキャラもモブもリアルに反応するけど、世界設定だけがホラー向けに改変されている)

■メインキャラ:非現実的 モブ:非現実的 世界設定の順守:全く考えていない

————————–
 目の前をカップルが仲良さそうに歩いていた。

 そこで大声で叫ぶことにした。

「リア充、爆発しろ!」

 その瞬間、目の前の男と女は爆発して爆炎と煙が上がった。

「く!?」

 爆風から身を守るため、俺は華麗に3回転しながら地面に伏せる。

 爆風が収まるのを待っていると、収まりきらない煙の中からゆっくりと現れた者がある。

 服がズタボロになったカップルだった。

「キサマ、ヨクモヤッテクレタナ」

 なんとあのカップルはアンドロイドだったらしい。

 人々は何が起こったかわからない様子で呆然としていたが、一人が悲鳴を上げ逃げ出すとつられたように次々と走って逃げていった。

 俺は混乱に陥りながらも、他の通行人に少し遅れて逃げ出した。

 一体なにが起きたんだ。
————————–

○コメント

もはやなんだこの世界となります。

これはなにかの比喩なのか? 一発芸なのか?

これで長編を完成させたら神ですが、とても読める気がしません。

全ての要素でリアリティを無視すると、あまりに現実離れしてしまいます。

短編では許されると思いますが、長編になると書く方も読む方も息切れするでしょう。

まとめ

このようにリアリティを無視すると必然的にギャグになります。

リアリティを無視したまま真面目に書こうとすると、「なんだか滑っている」作品になってしまうでしょう。

あなたがギャグ作品を書きたい場合は、上記のようにどれかのリアリティを無くしてしまうのも手ですが、真面目な作品を書きたい場合は全てのリアリティ要素をきちんと守っておいた方がいいと思います。

それでは!

 

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