自分が物語工学と言っている物に近い内容を言っている実用書でした。
自分流に解釈しつつ、まとめてみます。
自己流の解釈は青字にしました。
全体的な感想
6つのコア要素というアイディアは非常に強力だと思うのですが、個々の説明がなんかフワッとしています。
これをこのまま読んでも「わかったようなわからないような」と思うだけな気がします。
もっと厳密に書いて欲しいというのが正直な感想。
なので、自分なりの解釈もくわえて書いています。
6つのコア要素
物語には6つのコア要素がある。
決めていく順番はどうでもいいが、この6つが決まっていないと優れた物語は書けない。
アイディアが浮かんだままに書くと、失敗する。6つのコア要素がそろってから書き出す必要がある。
・コンセプト
・人物
・テーマ
・構成
・シーンの展開
・文体
1,コンセプト
「もし~~だったら?」の問いの形式で現される。
アイディアは断片で、アイディアをつなぎ合わせて問いの形にまでまとめたものがコンセプト。
例:「足を切断したバレーダンサーをは偏見を克服してプロの踊り手になれるか?」
例:「二十年前に解決した事件についてロサンゼルス市警の証拠隠滅とえん罪が判明し、人種間の摩擦と暴力がロドニー・キング事件勃発につながる」
例:「もしレオナルドダビンチが『最後の晩餐』にキリスト教や聖書の真相を描き入れていたとしたら?」
↑作中の例だけど上の二つが「もし~だったら」の形式になってないんだけど! この本、ちょこちょこ細かいところで一貫性が無い気がする。この作者、色々偉そうに言ってるけど、本人も曖昧なまま書いている気がする。
個人的には、ログラインと同じで読者が「それは一体どうなるのだ?」と思わせる一行か二行の文章のことだと解釈しました。
そして、このコンセプトの中に「目的」と「障害」の両方の要素が含まれているようです。
(この著者は目的と障害についてはあまり語ってない)
2,人物
第1次元:表面的な特徴・癖・習慣
ただの事実。
周囲の人にどう見えているか。
髪型・化粧・クルマ・服装・態度・偏見etc
※脇役にまで深みを出そうとしない方がいい。
↑これ、変に第1次元とか呼ばないで、単純に「外面」と書けばいいだけでは?? 英語のせいかもしれないけど、単語の選び方が不適切な気がする。
第2次元:バックストーリーと内面の悪魔
第1次元で外面を現したので、第二次元はその外面を説明する内面。
第1次元:理想的な社員に見える
第2次元:過去に四度も解雇されたので、必死に理想の社員を演じている。解雇された理由は勤務態度が悪かったから。さらにその原因は幼少期の親や教師との軋轢。
↑本文を読んでもなにを言いたいのか分からないけど、どうやらネガティブな内面のことを言いたいらしい。やはり説明の仕方がふにゃふにゃしてて要領を得ない。
第3次元:行動・態度・世界観
ピンチに陥ったときに、必要に迫られたときに、第一次元で取り繕うか、それとも第二次元の負け犬の顔をしめすか、それとも第三次元の「全く別な顔」をみせるか。
全く別な顔をみせた時、人物は変化したことになる。
↑これも説明が要領を得ない。ものすごくラフに解釈すると、
「人は外面とネガティブな内面があり、なにか出来事があると外面で取り繕うか弱い内面が出てくる。その人物が変化すると、そのどちらでも新しい顔を見せる」
ということだろうか。
勝手に例を作ってみる。いつものごとく、なろうテンプレ。
「本当は臆病な主人公が、能力で外面を着飾ってチートハーレムする。モンスターを倒すときや女の子に上から目線で接するときは着飾った外面が出てくるが、動揺すると臆病な性格が顔を出す。しかし、あるとき人を助けるために臆病さを克服した大胆な行動に出る」
こういう風に説明すると、それなりにおもしろいかもと思えますね。
3,テーマ
ストーリーが伝える意味。
物語によって何を考え、何を感じさせるか。
例:愛・憎しみ・若気の至り・裏切り行為・息苦しい結婚生活・宗教団体の真相・天国と地獄・過去と未来・社会対自然・裏切りと友情・忠誠・あくどいやり方・富と貧困・慈悲・勇気・叡智・欲・虚栄・笑い
個人的には「強調するもの」の事かと思いました。
同じコンセプトで書いた話でもなにを強調するかで作品の雰囲気が全く異なります。
例えばなろう系スローライフテンプレでも、「仲間との交流」を強調するか、「恋人との仲」を強調するか、「バトル」を強調するか、「経済」を強調するか、で全く雰囲気の違う作品になります。
何も強調せずに淡々と書くと、出来事の羅列になってしまいます。
4,構成
4つの箱で出来ていると言っています。
長さはほぼ四等分です。
この辺もすごくハリウッドの脚本術っぽいです。
箱1-設定
第2-4のための設定を示す部分。
・(できるだけ早く)読者の気を引く要素:フック
・主人公紹介
・人物紹介
・敵対者紹介
・主人公のかけがえのないものの紹介
この箱の終わりがプロットポイント1。
プロットポイント1で主人公にとっての全てが変わる。
何もしていない主人公はなにかをしないといけない状態になる。
主人公がすでに行動している場合は、障害がはっきり示される。
あるいは予想外の事態が起きて出来事がひっくり返る。
箱2-反応
箱1で設定が終わったので、主人公の目的がはっきりする。
その目的に向かって主人公が反応するが、戸惑っていて人間らしい反応を示す。
計画したり分析したりするけど、敵に対してまだ不利な状況。
この箱2の真ん中に「ピンチポイント1」(敵の存在を読者に見せる場面)を入れる。
この箱の終わりがミッドポイント。
ミッドポイントで主人公は何かに気が付いて計画を練る。
新しい情報が出てストーリーの流れが変わる。
↑この記事を書いているタイミングで「カンフーパンダ」を再度見たのですが、カンフーパンダでは考えを変えたのは主人公では無く師匠側でした。何かに気が付くのが主人公とは限らないようです。
箱3-攻撃
主人公が体勢を立て直し、積極的になる。
徐々に強くなっていき、内面の悪魔とも向き合い行動を変えていく。
この箱の真ん中に「ピンチポイント2」(敵の存在を読者に思い出させる場面)を入れる。
この箱の終わりがプロットポイント2。
プロットポイント2で主人公は解決に必要な新しい情報・学びを得る。
↑「カンフーパンダ」では主人公のパンダが父親から「特別な物はない」と教えられる場面。
箱4-解決
すでに全ての情報が出ているので、ここでは新しい情報はもう出ない。
主人公がどうやって目的に達するかを書く。
ポイント
・敵対勢力がしっかり見えるのはプロットポイント1(箱1の終わり)。それまでは伏線や部分的なシルエットだけ見せて、テンションを上げる。
5,シーン
シーン=場所と時間。
場所が変わったり時間が変わったら別のシーン。
シーンの役割はストーリーを進展させること。
1つのシーンで1つの新情報を出すようにするとよい。
6,文体
シンプルで読みやすく書く。
個性を出そうとして華美にするとリスクが大きい。
小説やシナリオは文体の良さで売れるわけでは無い。
まとめ
ざっくりまとめると、こんな感じだと思います。
・コンセプト:「もし~~だったら?」という問いの文章を作る。
・人物:内面と外面と変化した後の姿を考える。クライマックスでは変化した後の姿が現れる。
・テーマ:物語の中でどの要素に注目して描くか
・構成:4つの箱に当てはめる(ハリウッド脚本術とほぼ同じ)
・シーン:1つのシーンでは一つの新情報を出す
・文体:シンプルでわかりやすく。
小説の書き方本ではありますが、ほぼハリウッドの脚本術と同じ内容でした。
そのため、最初は「えーハリウッドの脚本術と同じじゃん。小説と映画では違うのでは?」と思っていたのですが、読んでいるうちに構成は役に立つように思えてきました。
作家が思いつくのはだいたい「シーン」です。
この構成方法はそのシーンをどう並べるかのガイドになっていますが、どういうシーンを書くかまでは規定していません。
思いついたシーンをどう整理していいのかわからない作者にとって、この構成方法は非常に役立つと思いました。
思いついたシーンをこの構成の通りに並べて、足りないところを追加で考えればいいのです。