読者を「掴む」小説の書き出し

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物語の冒頭に必要だとされていることをまとめます。

あくまで、王道的なことを書きます。

その王道を逆から行くことでおもしろい物語というのも書けますが、それを全部ごっちゃにすると訳が分からないことになるので、変則テクニックは枠外に書きます。

目次

最初の1ページ目で三つの要素を明示する

脳が読みたくなるストーリーの書き方から、最初の1ページ目で「これはなんについての本だろう?」という疑問に答えないといけないとされています。

 

三つの要素

1,誰の物語か?

2,今、何が起きているのか?

3,危機に瀕している物は何か?

 

1,誰の物語か?

読者は主人公に感情移入して、主人公が感じることを追体験する形で物語を楽しむので、主人公が必要です。

もし主人公がいなければ、それは事実を列挙しているだけになり、小説では無く新聞記事になってしまいます。

主人公は一番最初に出すべきです。

また、序盤で主人公の性格が分かるようにしておいた方が良いです。

「下衆」設定の主人公なのに序盤で普通に描いた場合、読者から見ると普通の主人公がいきなり下衆な事をやり始めたように見えてしまいます。

特徴的な性格なら序盤に書いておく方が無難です。

 

王道破り

最初に主人公を出すのが王道ですので、これを逆手にとることも可能です。

一番最初に出した人物を読者に主人公だと思わせておいて、すぐに殺してしまい、それを殺した相手が本当の主人公だったというやつです。

なかなか面白くありますが、感情移入という点ではマイナスなので、感情移入させたい物語ではやらないほうがいいでしょう。

 

2,今、何が起きているのか?

究極は「最初の一文で、その小説のストーリー全体を語る」。

そこまで出来なくても、最初の1ページで物語の俯瞰図を見せる必要があります。

そうでないと「この話はなんだ??」となってしまい、読者の興味がなくなります。

 

王道破り

これも王道破りができます。

最初のページでなにが起こっているのか全く分からず、読み進めるうちにだんだんと全体像が見えてくるという物語です。

こういう作品は結構あるのですが、実際にこういう作品を読者に読んでもらうのは至難の業です。

書籍化されている本で前評判も高ければ読者は「よくわからないけど、ここからきっと面白くなるのだろう」と考えて読んでくれるでしょう。

しかし、WEB小説でこれをやると「よくわからない。この作者は説明が下手なんだな。他の作品を読もう」となってしまいます。

王道はわかりやすくです。

 

3,危機に瀕している物は何か?

状況を説明するだけで無く、主人公に影響がある「危機」が必要です。

・不安定な状態

・対立している物

簡単に言うと、「このあとどうなってしまうんだろう?」と興味を持つような事です。

例えば「少年がおばあちゃんの家に出かけます」と書けば、「誰の物語か」「今何が起きているのか」は明確ですが、ここに危機がないので興味が引かれません。

ここに危機を足してみましょう。

「少年がおばあちゃんの家に出かけます。しかし、おばあちゃんは出かけてしまっていて、家には誰も居ないのです」と書くとどうでしょうか。

ここに「おばあちゃんの家に行きたいのに、誰もいないから入れない」という危機が発生します。

これで三要素が全て揃ったことになります。

明らかに先ほどより魅力的です。この少年はどうなるんだろう、と気になります。

 

王道破り

危機が一切無い作品もあります。

わかりやすいのは日常系のマンガやアニメです。

明確な目的もなく、危機もありません。

しかし、そういった作品では、かわいさやギャグが必要になります。

絵が無い小説で同じ事をやるのはかなり難しいです。

 

まとめ

この三要素を1ページ目に示すことが大事ですので、そうすると物語の最初から始めるわけには行かないかもしれません。

その作品が魔王を倒す話なら、魔王との戦闘シーンや魔王と戦うことを決心したシーンを1ページ目に持ってきて、その後村から出発するシーンに戻るということです。

村から出発する時点で魔王と戦うことが決まっていない場合、読者としては「なんかしらん主人公が村を出た。あっそ」となってしまいます。

小説の概要が理解できる部分を切り抜いて一番最初に持ってくるという処理が必要になりますね。

 

テンプレの素晴らしさ

この三要素は結局、読者に物語の俯瞰図を与えることが目的です。

どんな物語なのか分からないと読者は興味を持たないからです。

その点から考えると、いわゆる「テンプレ」には素晴らしさがあります。

なにしろ「あぁ、この作品はなろうテンプレだな」と読者が思った瞬間に以下のことが確定します。

「(誰)日本人が

(何が起きている)死んで異世界に転生して

(危機)自分や周囲の人物に降りかかる災厄を振り払う」

だから他の作品よりも1ページ目の描写が甘くても読者が理解できるのです。

でも、そのテンプレから外れた作品は、この三つの要素をちゃんと描かないと読者には謎の話になってしまいます。

 

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