昔、NHKを見ていたところイギリスのガーデニングについての番組がやっていました。
なんでもイエローブックという優秀な庭が掲載される書籍があるらしく、その文化だけで「おお」と面白く感じました。
そして、審査員がある庭を訪れて審査をしたのですが……
結局のところ、不合格。
そして審査員が言ったあるセリフが凄く心に響きました。
審査員のセリフ
「この庭は、入った時点で全てを見渡せてしまいます。
優れた庭は入っただけでは見えない部分があって、そこはどうなっているんだろうと興味を惹かれ、思わず奥へ奥へと入り込んでしまうのです。」
※うろ覚え
先が見通せないと言うこと
この審査員の言葉はすごく興味をそそられました。
そして、その後に紹介された40平米という小さな庭が賞賛されていました。
その庭は狭いながらも空間をいくつにもわけ、敢えて曲道を設けることで見通しを悪くしています。
テレビ越しに見ても「この先はどうなっているんだろう」と思うような空間設計でした。
これ……人間の興味の根本的な部分じゃないでしょうか。
ぱっと見て、「あ、こういう感じね」と思ったら興味を持たないです。
「あれ、見えないあそこはどうなっているんだろう」と思うから、そこから先に行ってみようとするんです。
小説も同じなんだと思います。
小説を書いたり、なろうに長く住んでいる人には顕著なことですが、かなりの物語のパターンを知っています。
なので、冒頭の数十行を読んだ時点でだいたい「あのパターンだ」と見渡せてしまいます。
そしてそのパターン通り過ぎると、興味を失います。
ということで、イングリッシュガーデンから零細作者も学ぶことにしました。
「冒頭で先を見通せない物語にすることで興味を引く物語にする」
1,入り口で「このさきの景色が想像できない」と思わせる
見通せてしまう王道パターンを避ける。
または、王道パターンに変な捻りを加えたものにする。
2,入り口で「このさきの景色はもう分かった」と誤認させない
例えば「王道ものに見えるが、途中で牙を向いてすごい展開になる」という作品があります。
「開けている草原だと思ったら、途中で透明な壁があってそれを超えたら森だった」みたいなイメージですね。
これ、読んでもらえればいいのですが、まず入り口の時点で「ずっと草原か。つまらなそう」とバックされる確率高いです。
冒頭で「見通せる」と思わせたら、たとえそれが錯覚でも冒頭しか見ていない読者は気が付きませんから。
3,曲道をつくる・障害物を置く
イングリッシュガーデンの手法そのままです。
直線の道は「あそこに魔王城がある。あそこに突っ込んで紫の肌の筋肉マッチョの魔王を倒せば我らの勝ちだ!」という王道です。
出発の時点で全部見通せています。
この場合の曲道は「あの森の先に魔王城があるという。しかし、森が視界を遮っている。森の先には一体何があるのか……。魔王城がどんな形かもわからないし、そもそもどれほど距離があるかもわからない。魔王もどのような姿かわからない。それでも行かなければならない」という感じでしょうか。
要は最初は見通せていません。
進まなければなにもわからないという状況です。
個人的にも後者のほうが興味惹かれます。
4,多様な花を植えて、いつでも花が咲いているようにする
イングリッシュガーデンでは、色のバランスも大事ですし、どの季節でも花が咲くようにしないといけないそうです。
春の一時期は色とりどりでも、季節が変わったら全部緑一色、ではいけないそうです。
咲く時期がずれた花を植えて、いつでも色とりどりの花を咲かせる必要があるらしいです。
イングリッシュガーデンってなんて難しいんでしょうか。
私達もそれに負けじと頑張らなければいけないのでしょう。
「戦闘描写は凄いけど日常に花がない」「日常描写は面白いけど、敵描写に花がない」というのはいけないです。
どのページにも花が咲いているように気をつけなければいけません。
まとめ
イングリッシュガーデンという小説からほど遠い話でしたが、審査員の言葉は人間心理に根ざした非常に重要な言葉でした。
先が見通せないイングリッシュガーデンのような小説を書きたいもんです!