そもそも小説というのは読み始めてもらうのが難しいです。
そのハードルを越えてせっかく読者が読み始めてくれたのに、作者の不注意で読者が読むのを止めてしまったら悲しいですよね。
ということで、この記事では読者が読むのを止めてしまう理由を列挙していきます。
長すぎる説明文
例えば、「すでに面白いと分かっている作品」や「自分で購入した本」なら長い説明文を読んでくれるかも知れません。
(金銭感覚は変わるので、大人になると自分で買った本でもあまり真面目に読まなかったりします)
しかし、あなたや私の作品のような無名な小説は、そもそも読者はそんなに熱量を持って読んでくれません。
長い説明文があると、そこで面倒くさくなって読むのを止めてしまいます。
長い説明は、ストーリーの随所で少しずつ解説していくようにする等、読者の負担を減らす必要があります。
特に序盤の長文解説は読者のほとんどが帰ってしまうので気をつけましょう。(それでもいいという覚悟があればそれでもいいです)
「語りたいのは物語じゃ無くてこの設定なんだ! むしろストーリーなんておまけだ!」という場合もあると思います。
そのときは、その設定を解き明かして行くような物語にすればいいと思います。
冒頭から主人公の不幸話
小説を読み始めた人は主人公とは初対面な訳です。
その初対面の人に初っぱなから不幸話を披露されたら、不幸自慢・愚痴だとしか思えません。
特に女性向けコンテンツで多い気がしますが、冒頭でうんざりして読むのを止める人はかなりいるはずです。
そもそも、愚痴話というのは人は聞きたがらないものです。
主人公の不幸な境遇を語りたければ、主人公が独白するのでは無く、日常描写の中で見せるとか、他人に語らせるとか別の手段を取りましょう。
不幸に会っている本人が「不幸だ不幸だ!」と騒ぎ立てると、同情よりも反感を持たれます。
読者が入っていけない人間関係
主人公やサブキャラ達の人間関係が最初に出来すぎていると、読者が入っていく余地がありません。
作者は理解しているとしても読者は理解できないとついて行けません。
そういう意味で、異世界転生のように主人公と読者の両方の知識がゼロから始まるのはとても有効です。
ある程度人間関係が出来ているとしても、新たに読者も主人公も知らない新キャラを出すとかして、他人と仲良くなっていく仮定を主人公と読者が共有しないと、読者がその人間関係に入っていけません。
主人公以外の話
読者というのは主人公に感情移入して読むので、それ以外の人物にはあまり興味がありません。
私が過去の自分の作品を読み返したとき、サブキャラのエピソードが「無駄だな」と感じたことがありました。
作者が読んでもそう思うくらいですから、読者にとっては余計に無駄に感じます。
物語がかなり進んで、読者が愛着を持ったキャラクターであれば、そのキャラクターの話は面白く感じます。
しかし、読者にとってまだ分からないキャラクターの話が突然始まると、「俺は主人公にこれから起こることを見たかったのに、なんでいきなり関係ない話を始めるんだ!」と読者が不満を感じて離れてしまいます。
なので、群像劇や複数主人公の作品を除き、基本的には主人公の話に専念し、サブキャラの話は相当後に持っていく方がいいです。
不用意な視点の変更
小説を書いていると、つい少し凝ったことをやりたくなります。
その中で筆頭にあげられるのが、「不用意な視点の変更」です。
カットバックしたり、小刻みに視点を変えたり、無意味にサブキャラの視点にしてみたり、そういったことです。
たしかに書いているときは面白いのですが、冷静になって読んでみると単純に読みにくいのが普通です。
そして、視点が変わると読者の感情移入は解けてしまいます。
つまり、視点を頻繁に変えると言うことは、「読みにくくて」「感情移入が外れる場所が多い」作品になってしまうということです。
自分のセンスによほどの自信が無い限り、視点はあまり変更しない方が無難です。
不用意な時間の変更
視点の変更と同じように、時間を変化させることも読者の感情移入を無くしてしまいます。
たとえば、いきなり主人公の十年前に戻った場合、その主人公の心情は現在の主人公とは異なっているので、読者の感情移入は最初からやりなおしになります。
十年後に飛ばす場合も同じです。
時間は飛ばさずに順番に書いていく方が無難です。
(え? 時間を小刻みに動かしていても面白い作品がある? それはその作者がうますぎるだけです)
ヒロインが魅力的じゃ無い
特にラノベやファンタジーではヒロインが魅力的じゃ無いと読者が興味を失います。
作者が照れ隠しでヒロインの魅力を控えめにしてしまうと、作品の持つ魅力が大幅に失われます。
かわいげがない。暴力女etc
↑だいたい作者が照れ隠しでこういうキャラにしてしまう。
主人公が傍観者
物語というのは、「主人公が目的をもって何かをやる話」です。
主人公が一時的に目的を見失ったりしても問題ありませんが、度が過ぎると読者は見放します。
特に長期作品で良くあるのが、癖のある脇役が出てきてその脇役が明確な目的を持って行動をしていて、主人公の動きが鈍っているうちにそちらの脇役が主役になってしまうと言うパターンです。
主人公と脇役が同時に動いていればいいですが、主人公が動きを止めているときに脇役が動いていると相当に危険です。
それでも面白ければいいですが、よほどの書き手で無いと話が散漫になって緊張感が薄れてつまらなくなります。
「文学的」な文章
作者というのは自己顕示欲の塊です。
なので、「読者に舐められたくない!」と気張ってしまい、つい華美な修飾語をつかったり、最近知ったばかりの難しい言葉を使おうとしてしまうのも分かります。
しかし、そういう文章は読みにくいです。
昔の文豪と呼ばれた小説家達の作品を読むと、言葉が古くても意外と平易にわかりやすい言葉で書かれています。
よくよく考えてみれば分かると思うのですが、世の中のほとんどの人は「難しくて格好いい文章」より「読みやすくてわかりやすい文章」の方が好きです。
なので、どうしても「めちゃくちゃ凝った文章が好きなんだ!」というこだわりがなければ、無理をして格好つけるより、誰が読んでも分かるような文章を心がけた方がいいです。
読みにくいと読者は読みませんから。
ストレス展開
他のジャンルであればストレス展開があってもいいのですが、楽しむために読まれる「エンタメ作品」ではストレス展開があまりに重いと読まれません。
主人公が無能
自分の能力が足りなくて苦しむことなんて、リアルでいくらでもあります!
物語の仲間で同じ苦しみを味わいたくありません!
改善する場合は、「能力Aがないので無能と思われているが、能力Bを使うことで補って相手を驚かせる!」とかですかね。
仲間が死ぬ
当然これはストレスです。
物語が迷子になっている
「最初は魔王を倒す話だったのにいつの間にか村おこしをしている……」とか、そういった迷走している作品はけっこうあります。
読者は漠然と「この話は○○という主人公が××をする話だ」と認識してるので、それがずれていくとだんだんと興味を失います。
例外は読者がキャラクターをものすごく好きな場合です。
キャラクター愛が強いと何をしていても追いかけてしまうものです。
ですが、あまりキャラクター愛に期待しない方がいいです。
作者にとっては特別なキャラクターでも読者にとっては数ある作品の中の一人の登場人物に過ぎませんから。
読者が把握できない速度で仲間が増える
読者は主人公になりきるか、主人公の味方のつもりで物語を読みます。
主人公になりきるには主人公と同じ認識を持つ必要がありますし、主人公の味方でいるにも主人公と仲間達のことをよく知る必要があります。
人は「よく分からないキャラクター」になりきることはできませんし、「よく分からない仲間達」を好きになることも出来ません。
つまり、読者は主人公とその仲間達を把握しているという状態でないといけません。
ところが、仲間キャラをどんどん追加すると、読者は把握しきれなくなります。
最悪なのが、「○○が仲間になった」と言ってどんな人か分からないキャラクターが事後報告的に仲間に入っているケースです。
こうなると、読者にとって主人公の仲間達が「謎の人たちの集団」になってしまい親しみが消失してしまいます。
物語が終わっている
物語というのは「変化」を語るものです。
「ずっと平和でした。めでたしめでたし」では物語になりません。
なにか事件が起きて、その事件を解決するための行動を通じて主人公・脇役・世界が変化していきます。
読者というのは事件そのものよりもその登場人物たちの変化に興味があります。
ところが、主人公が完全に成長して、脇役も成長して、世界が平和になってしまったら、もう変化するものはありません。
変化する物がないということは「物語が終わっている」ということです。
この状態で無理矢理エピソードを作って話を延ばしても、読者はだんだんと興味を失っていきます。
冷めてしまう展開
以下は読者をなんとなく冷めさせてしまう展開です。
これは上記と違って即アウトというわけでありませんが、積み重なっていくと読者の心はだんだんと離れていきます。
その話は読んでくれても、次の更新は待ってくれないかも。
世界が十人くらいの人間で出来ている
その物語を読んでいて、主人公と仲間と敵を合わせて十人くらいしか世界に居ないように見えてしまうパターンです。
村人の描写や旅人の描写などいわゆる「モブ」を書かないとこういう話になりがちです。
最初のうちはそれでよくても、長編でずっとこの状態だと世界がどんどん狭く見えて安っぽく思われるようになります。
その違和感が積み重なると、ある日突然その物語に興味を失ってしまいます。
(追記中)